日本は、AI学習を包含できるほど射程の広い著作権の権利制限規定を法律に明記した、主要法域の中で最初の国である。しかもそれは、生成AIが経営課題として意識されるようになるより何年も前のことだった。2019年1月1日に施行された著作権法第30条の4は、AI開発者が権利者の許諾を得ることなく、公開インターネット上からスクレイピングされた著作物を含む著作物を機械学習モデルの学習に利用できる法的根拠となっている。日本の出版社や新聞社がAI企業を相手取った訴訟を起こし始め、政府の著作権分科会がこの論点の見直しを積極的に進めている今、この規定が実際に何を認め、どこに限界があるのかを理解する重要性はかつてなく高まっている。
第30条の4が認めていること
第30条の4は、著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し、又は他人に享受させることを目的としない場合には、必要と認められる限度において、いかなる方法によるかを問わず著作物を利用できると定めている。これはしばしば「非享受目的」の要件と呼ばれる。同条は例示として三つの類型を挙げている。すなわち、記録又は伝達に関する技術の開発若しくは実用化のための試験の用に供する場合、情報解析(多数の著作物その他大量の情報から、言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うこと)の用に供する場合、そして人がその表現内容を知覚することなくコンピュータが処理するその他の付随的な利用の三つである。機械学習はまさにこの情報解析の類型に該当する。モデルは、人間がある著作物をそれ自体として読み、見て、聴いて楽しむためではなく、統計的なパターンを検出するために学習されるため、裁判所及び文化庁は、その根底にある目的を非享受目的と捉え、以下で述べるただし書きの適用がある場合を除き、ライセンスなしに適法であるとしてきた。
同条はあえて技術中立的に設計されている。2018年の著作権法改正で追加された、いわゆる「柔軟な」権利制限規定の一つとして起草されたもので、立法者が当時十分に想定できなかった将来の利用形態、生成AIもその一つに含まれる、をカバーすることを狙いとしていた。この柔軟性ゆえに、同条の正確な適用範囲は、許容される行為を固定的に列挙することでは確定せず、いまなお議論が続いている。
「著作権者の利益を不当に害する」ただし書き
第30条の4にはただし書きが付されている。当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし、著作権者の利益を不当に害することとなる場合には適用されない、というものである。文化審議会著作権分科会法制度小委員会が公表した2024年の政策文書「AIと著作権に関する考え方について」、及びこれに付随して2024年7月31日に公表された「AIと著作権に関するチェックリスト及び留意事項」は、このただし書きがどのように適用されるべきかを示している。一貫して強調されているのは市場代替の考え方である。すなわち、当該AI学習における利用が、その著作物について現存する市場又は合理的に予見可能な市場と衝突するか、あるいは権利者が現実的に参入し得る市場を奪うことになるかという観点である。
文化庁が挙げる最も明確な例は、情報解析やAI学習のパイプラインに投入することを想定して編集され、販売されているデータベースである。まさにその目的での利用許諾が商業的に提供されているにもかかわらず、当該データベースを学習目的で複製することは、権利者自身のライセンス市場を直接に代替するものとして、不当な利益侵害に当たると扱われる。AI向けのスクレイピングを阻止又は制限する技術的手段によって保護されている著作物についても、同様の懸念が生じる。これに対し、開発段階での試験のために限られた点数の著作物や短い断片を複製する行為は、著作物自体の市場を実質的に奪うものではないため、一般には不当な利益侵害とは扱われない。
より議論が分かれる第二の論点は、特定の既存著作物と類似した作風や表現の出力を生成させることを狙いとした学習である。例えば、あるアーティストの作品群でモデルをファインチューニングし、そのアーティスト特有の作風を再現できるようにする場合がこれに当たる。日本の学説は一般に、これを「混合目的」の事案として扱う。すなわち、享受と同視し得る出力を可能にする意図をもって学習が行われた場合(よく引き合いに出される例として、よく知られた架空のキャラクターを出力させることを狙って画像生成モデルを学習させるケースがある)には、ただし書きとは別に、第30条の4の前提である非享受目的そのものが成立しない可能性がある。特定可能なアーティストの作品群を対象とした商業規模のファインチューニングが一般化するにつれ、この領域こそ争いのある訴訟を生む可能性が最も高いと法律専門家は指摘している。
二段階構造、二つの法的枠組み
文化庁の枠組みは、見落とされがちなある区別を軸に組み立てられている。第30条の4が対象とするのは開発・学習段階であり、個々の出力が著作権を侵害するか否かについては何も定めていないという区別である。AI出力の生成及び利用は通常の著作権ルールに服し、複製、翻案、そして先行著作物との類似性・依拠性という標準的な判断基準が、人間が作成した著作物の場合とまったく同様に適用される。第30条の4のもとで完全に適法に学習されたAIシステムであっても、その出力が特定の保護著作物と実質的に類似し、かつ当該著作物に依拠して生成されたものであれば、なお侵害的な出力を生み出し得る。学習段階は第30条の4、出力段階は通常の侵害分析という、この二段階構造こそが、この論点に関するその後の日本のガイダンスのほぼすべてを貫く基本的な考え方である。
ガイダンスは今なお発展途上
文化庁と経済産業省は共同で「AIと著作権に関する関係者ネットワーク」を招集し、クリエイター、実演家、AI開発者、サービス提供者を一堂に集めた。両省は2025年5月30日、それまでの同ネットワークでの議論の概要を公表し、技術的なオプトアウト手段をどのように位置づけるか、AI学習用データのライセンス市場の発展をどう促すか、そして交渉力の乏しい個々の創作者を抱える漫画、アニメ、報道出版などの業界に不当な利益侵害の判断基準をどう適用するかといった、なお意見の対立が続く論点を整理した。著作権分科会政策小委員会のもとには新たに「法制度ワーキングチーム」が設置され、2025年9月11日に第1回会合が開かれた。その議題には、AIと著作権のほか、生成AIを巡る最新の状況、指定団体制度、補償金の分配、レコードの実演及び伝達に関する権利といった他の制度的論点も含まれており、政府の2026年知的財産推進計画の策定プロセスに反映される見込みである。2026年半ば時点で、AI学習への不当な利益侵害ただし書きの適用を正面から解釈した判決を下した日本の裁判所はまだなく、そのため判例法ではなく文化庁のガイダンスが、コンプライアンス上の拠り所として機能し続けている。
これとは別に、第30条の4とはまったく区別して理解すべき制度として、2023年の著作権法改正により、権利者を容易に特定又は連絡できない著作物を対象とする新たな裁定制度が設けられ、2026年4月1日に施行される。この制度により、利用者は補償金の支払いを条件に、文化庁長官から最長3年間の期間限定の許諾を得ることができる。これは、管理されていない、事実上の孤児著作物という別の問題に対応するものであるが、第30条の4自体の要件を満たさない場合に、AI開発者その他の利用者に対して追加の適法な利用経路を与えるものである。
執行は学習段階ではなく出力段階から始まっている
日本の権利者が訴訟も辞さない姿勢にあることを最も明確に示したのは2025年の出来事だったが、注目すべきはそれが学習段階ではなく出力段階に関するものだったという点である。読売新聞社は2025年8月7日、東京地方裁判所にPerplexity AIを提訴し、同サービスの検索回答機能を通じて約11万9000本の記事が無断で複製及び公衆送信されたと主張し、約22億円の損害賠償を求めた。日本経済新聞社と朝日新聞社は数週間後、同地裁に共同で訴訟を提起し、それぞれ22億円の損害賠償を求めた。いずれの事案も、第30条の4のもとで行われたAI学習の適法性を争うものではなく、原告らの記事内容を複製又は近似的に再現する検索拡張型の出力に焦点を当てている。この違いは、この分野の動向を追う者にとって重要である。これらの訴訟が検証しているのは、日本の二段階構造のうち出力段階、すなわち通常の侵害分析の側であって、学習に関する権利制限規定そのものではない。学習段階の事案が日本の裁判所に持ち込まれた際に、不当な利益侵害ただし書きを広く解釈する判決が下されるかどうかが、第30条の4の実務上の射程を最も大きく塗り替え得る展開であることに変わりはない。
日本とEU、米国との比較
日本のアプローチは、主要な二つの代替モデルのいずれとも構造的に異なっている。欧州連合のデジタル単一市場指令は第4条において、テキスト・データマイニングに関する法定の許諾を定めているが、これは権利者が第4条3項に定める機械可読な手段などによって適切な方法でその権利を有効に留保していない限りで適用される、すなわち、権利者に同意の推定ではなく権利制限からのオプトアウトを与える仕組みである。EU AI法第53条1項(c)は、汎用AIモデルの提供者に課される著作権コンプライアンス義務を、このオプトアウトの仕組みに直接結び付けている。モデルの学習段階における著作物の利用と、その後モデルが保護されたコンテンツを再現し得る能力との関係は、ミュンヘン地方裁判所が2025年11月11日に下したGEMA対OpenAI事件判決の中心的な論点であった。同判決は、OpenAIのモデルの出力に保護された歌詞が現れたことについてのOpenAIの責任を扱ったものであり、依拠する法文こそ異なるものの、日本の学習段階と出力段階の区別との関連で注目に値する事案である。
米国は、専用の制定法上の権利制限規定ではなく、著作権法107条に定める、開放的な四要素からなるフェアユース法理に依拠しており、判例はすでに割れている。Bartz対Anthropic事件では、カリフォルニア州の連邦地方裁判所が2025年6月、適法に取得された著作権保護書籍を用いた学習は「著しく変容的」でありフェアユースに当たると判断する一方、Anthropicが海賊版の書籍データを保有していたことについては別途、保護されないと判断した。Thomson Reuters対Ross Intelligence事件では、デラウェア州の連邦地方裁判所が2025年2月、著作権保護されたヘッドノートを用いて競合するリーガルリサーチツールを学習させたことはフェアユースに当たらないと判断し、その出力が原告製品と同一市場で直接競合していた点を重視した。日本の第30条の4は、この二つのモデルの中間に位置する。個別事案ごとの判断となる米国のフェアユース審査よりも明確で予測可能性の高い制定法上のルールである一方、EUのオプトアウト制度とは異なり、権利者が特定の著作物を権利制限の対象から積極的に除外する仕組みは用意されておらず、その代わりに不当な利益侵害ただし書きに組み込まれた市場代替の論理に依拠している。
権利者が知っておくべきこと
第30条の4は、そもそも学習段階での利用について権利者の許諾を要件としていないため、実務上の交渉材料はライセンス交渉の場合よりも狭い。情報解析ライセンスの提供を想定してデータセットやデータベースを構築し、それに応じた価格を設定しておくことは、AI開発者がその市場を迂回して利用した場合に、当該利用を不当な利益侵害ただし書きの範囲内に取り込むための最も明確な方法である。AI向けアクセスを制限する機械可読な信号を含む技術的保護手段を適用し、その実施状況を記録しておくことは、市場代替の主張を補強する。権利者は学習だけでなく出力も監視すべきである。生成物が特定の保護著作物を実質的に再現しているかどうかを規律するのは第30条の4ではなく日本の通常の侵害ルールであり、読売、日本経済、朝日各紙の訴訟が争われているのもまさにこの点だからである。ただし書きの立証のハードルが高いことを踏まえると、出版社やクリエイター団体がAI開発者と直接交渉するといった業界レベルでの連携が、個別の権利行使に代わる実務的な選択肢として台頭しつつある。
AI開発者が知っておくべきこと
真正な情報解析目的で収集された著作物を用いた学習は、第30条の4のもとで一般に正当化し得る。しかし、学習が特定の著作物やアーティストの個性的な表現を再現することを意図的に狙ったものである場合、同じデータについてすでに商業的なライセンス市場が存在する場合、あるいは技術的なアクセス制限が回避された場合には、この正当化根拠はかなり弱まる。最も安全なコンプライアンス態勢は、学習段階と出力段階を、それぞれ別個の管理を要する別個のリスク領域として扱うことである。というのも、第30条の4のもとで適法に行われた学習プロセスは、実装済みのモデルが特定の著作権保護著作物を実質的に再現する出力を生成した場合には、何ら抗弁にならないからである。日本国内で活動する開発者はまた、著作権に関する責任は拘束力ある法律に根差す一方、日本のAI固有の枠組みは任意のものにとどまっているため、規制当局や裁判所が主として参照するのはAI推進法やAI事業者ガイドラインではなく、文化庁のチェックリスト及びガイダンスであると想定しておくべきである。著作権分科会の法制度ワーキングチームの審議や、係属中のPerplexity訴訟から生じる判決を注視することが、不当な利益侵害の基準が今後どのように解釈されていく可能性が高いかを追跡する最も直接的な方法である。
一次情報源
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