AIとESGガバナンスは、人工知能と環境・社会・ガバナンス(ESG)報告との双方向の関係を扱います。一方では、AIシステムは、測定し開示する必要のあるESGへの影響を生み出します。すなわち、モデルの学習と推論によるエネルギー消費、データセンター冷却のための水使用、AIハードウェアによる電子廃棄物、雇用の喪失、コミュニティに影響を及ぼすアルゴリズムのバイアス、そしてAIの監督のためのガバナンス体制です。他方では、AIは、衛星による環境モニタリングからサプライチェーンの透明性分析に至るまで、ESGの測定、報告、パフォーマンスの改善にますます利用されています。ESG報告義務の対象となる組織にとって、ガバナンス上の課題は、AI関連のESGへの影響が開示に正確に反映されること、そしてESG報告に用いられるAIシステム自体が統制され、検証され、透明であることを確実にすることです。

AIの環境への影響

AIの環境フットプリントは重要であり、拡大しています。大規模なAIモデルの学習には、多大な計算資源とエネルギーが必要です。国際エネルギー機関(IEA)は、データセンターの電力消費が主にAIワークロードによって2022年から2026年の間に倍増する可能性があると推計しています。データセンター冷却のための水消費は新たに浮上している懸念であり、1つの大規模なデータセンターが年間に数百万リットルの水を消費することもあります。気候関連の開示要件(EUのCSRD、ISSB基準、SECの気候関連ルール)の対象となる組織は、AI関連のエネルギー消費と排出量を、スコープ2(購入電力)、さらにはスコープ3(バリューチェーン)の報告に含めるべきです。クラウドベースのAIサービスを利用する組織は、クラウドプロバイダーから排出量データを入手し、報告に含めるべきです。

AIの社会への影響

AIの社会的影響には、労働力への影響(雇用の喪失、求められるスキル、アルゴリズムによる管理下での労働条件)、消費者への影響(信用、保険、住宅、雇用の意思決定におけるアルゴリズムのバイアス)、そしてコミュニティへの影響(監視、コンテンツモデレーション、サービスへのアクセス)が含まれます。ESG報告フレームワークは、組織がこれらの影響をどのように管理しているかの開示をますます求めるようになっています。EU AI法における高リスクAIの基本的権利影響評価の要件は、ESG報告の社会的側面と直接的に交わります。

ガバナンスの側面

ESGのガバナンスの柱は、AIガバナンスに直接対応します。すなわち、AIに対する取締役会の監督、説明責任の体制、リスク管理の枠組み、倫理方針、監査の仕組み、そしてステークホルダーとの対話です。ESGパフォーマンスを評価する投資家やアナリストにとって、AIガバナンスの成熟度は、より広範なガバナンスの質を示す代理指標になりつつあります。AIを適切に統制する組織は、他の複雑なリスクも適切に統制している可能性が高いのです。

実務への統合

AIをESGのマテリアリティ評価に組み込み、どのAI関連のESGへの影響が自社のステークホルダーにとって重要かを見極めましょう。AIのエネルギー消費を環境報告に含めましょう。労働力へのAIの影響を社会報告で開示しましょう。AIガバナンスの体制、方針、監督の仕組みをガバナンス開示で報告しましょう。ESGの報告と測定に用いられるAIシステム自体が統制され、検証され、透明であることを確実にしましょう。不正確なESGデータを生成するAIシステムは、誤解を招く開示として証券法上のリスクを生じさせます。

さらに読む:IEA『エネルギーとAI』 | OECD AI原則

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